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作成日:2025年11月25日

土鍋・羽釜・おひつの食文化を通じて、収穫したての新米を味わう

米福 / AKOMEYA食堂 神楽坂 / いくしか

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秋は、紅葉が目を楽しませ、食が心を満たす季節。食欲の秋には、栗、松茸、かぼちゃ、そして収穫を終えたばかりの新米が食卓を彩ります。

新米はつややかな粒感とやわらかな口あたり、ほのかな甘みが魅力。けれど、その味は品種だけでは決まりません。研ぐ、浸す、火にかける、蒸らす。さらに炊く器や盛る器までもが風味を大きく左右します。

器が変われば、お米の味わいも変わります。土鍋、羽釜、おひつ——これらは単なる伝統ではなく、お米の味を変える道具です。東京には、こうした違いが体験できる専門店があります。ここでは、技法と器の組み合わせによってどう変わるのかを比べることができ、お米一粒一粒の違いを楽しめます。

“米”が主役の土鍋体験 — 米福

JR恵比寿駅から徒歩約3分。米福は、一度の食事で複数の銘柄米を味わえるユニークな店です。

米福の一日は、農家や商店から直接仕入れた玄米を精米し、富士山の天然水に数時間浸すことから始まります。これによりお米は均一に水分を吸い、むらなく炊き上がります。料理長によれば、お米の浸水は微妙な違いを引き出し、うま味の増した仕上がりにつながる技法です。

店では、注文されたお米を一人前ずつ萬古焼の土鍋で炊き上げます。まとめて炊くほうが簡単ですが、米福はこの方法にこだわります。炊き上げのあいだ土鍋内の圧が高まり、お米がぐっと持ち上がるようにふっくらと炊き上がるからです。丁寧な工程を経て、蓋を開けると湯気と香り、きらめく白さが迎えてくれる。そんな驚きの瞬間が生まれます。

年間を通して約30種類を厳選し、常時5種類の銘柄米を提供。いずれも同一の手法で炊き上げるため、品種ごとの繊細な違いを正確に比較できます。メニューはコースに加えてアラカルトも用意。季節の焼き魚やすき焼き、定番の味噌汁などがお米を引き立てます。

料理長は200種類以上のお米を試食してきました。「訪れるたびに新しいお気に入りを見つけてほしい」。一杯のご飯を通して農家の情熱を伝え、お米は単なる主食ではなく、日本が大切にしてきた“食の礎”だと気づかせてくれます。

羽釜ご飯と地域の味 — AKOMEYA食堂 神楽坂

AKOMEYA TOKYOは、「お米が日本料理の核であるなら、一杯一杯のご飯に込められた喜びをブランドとして確立していこう」というシンプルな発想から生まれました。

神楽坂駅から徒歩わずか1分、AKOMEYA食堂 神楽坂は「アコメヤ トウキョウ イン ラカグ(AKOMEYA TOKYO in la kagū)」内にあります。ここでは、丸い形状で自然な対流を促す羽釜を用いて、少量ずつ丁寧に炊き上げています。羽釜は素早く均一に炊き上げることができ、きめ細かな食感と自然な甘みを持つ、ふっくらとしていてコシのあるご飯が安定して炊き上がります。メニューには、冬にはサクッと揚げた牡蠣フライなど、地域や季節の食材が豊富に並び、旬の食材と日本各地のお米を楽しむことができます。

1階のショッピングコーナーでは、メニューに使用されているお米や調味料を買うことができます。AKOMEYA TOKYOは農家や商店と緊密に連携し、味だけでなく、持続可能な農業など、栽培のストーリーにも目を向けてお米を選んでいます。

AKOMEYA TOKYOでは、多様なお米から選べるようにするため、「アコメヤお米コンシェルジュ」というコンセプトを設けました。ワインのソムリエのように、料理ごとに最適な米の組み合わせ(ペアリング)を勧める専門スタッフです。彼らは例えば最適な寿司用のお米を選ぶ手助けをするだけではありません。繊細な刺身やこってりした肉料理に合わせる品種やブレンドも提案し、まったく新しい風味や食感との出会いを創出します。

2階のイベントスペースでは、お米のテイスティングから土鍋料理教室まで、年間を通じてワークショップを開催。参加を重ねるほど、いつもの白ご飯の向こうに、新しい味と深い理解が広がります。「知る」から「味わう」へ。食卓の新しい定番が、ここから生まれます。

おひつで味わう素朴な定食 — いくしか

渋谷パルコ地下1階にある「いくしか」は、「行くしかないよね」という意味で、深夜のコンビニフードに代わるヘルシーな選択肢をコンテンツクリエイターに提供したいと考えた映像制作会社のプロジェクトから始まりました。いまでは、炊きたてのご飯を中心にした、手ごろで心安らぐ定食を求めて、買い物客や旅行者が列をつくります。

いくしかのご飯はすべて土鍋炊きです。炊く前に昆布水に浸すことで、ほのかなうま味を加えます。炊き上がったご飯は温かいまま木製のおひつへ。お米の余分な水分をおひつが穏やかに吸収してくれるので、お米のふっくら感とぬくもりを保ったままテーブルに運ばれます。

メニューは炊きたてのご飯を主役に据え、ご飯との相性が絶妙なバランスになるよう、あっさりとした味付けが特徴です。ご飯のおかわりは何杯でも無料なので、おなかいっぱいになるまで食べることができます。季節の料理は日替わりで提供され、豚の角煮は特に人気です。「丁寧に作られた定食のシンプルな喜びを気軽に体験してほしい」と店主は語ります。

いくしかのお米は、店主の故郷である福島県産です。渋谷で提供することでそのおいしさを伝えると同時に、2011年の東日本大震災からの復興支援を続けています。収益の一部は福島の子どもたちに寄付され、一杯ごとに小さな恩返しを形にしています。

土鍋で炊いたご飯、羽釜で炊いたご飯、おひつで仕上げたご飯、器が変わればお米の風味は変わります。収穫したてのお米が並ぶこの季節、炊き方や味わい方の繊細な違いを比べることは、尽きることのない楽しみです。

米福

住所 東京都渋谷区恵比寿西1-4-2 川田ビル B1F
URL 米福

AKOMEYA食堂 神楽坂

住所 東京都新宿区矢来町67
URL AKOMEYA食堂 神楽坂

いくしか

住所 東京都渋谷区宇田川町15-1 渋谷PARCO B1F
URL いくしか

営業時間・定休日・料金等の最新情報については公式ウェブサイトでご確認ください。