私の東京ガイド
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作成日:2023年3月27日
映画ファンの層が厚い東京には古くからミニシアター文化が根付いており、古き良き旧作を上映する名画座を含め、個性豊かな小規模の映画館がたくさんあります。手軽なインターネット配信が主流になる一方で、独自の上映プログラムからは新たな気付きや楽しみを得ることができるとあり、その価値が今また注目されています。今回は、ライトな映画ファンも、映画を愛するシネフィル(映画狂)も楽しめる、おすすめの個性派ミニシアターおよび名画座をご紹介。不朽の名作からレアなインディーズ作品まで、あらゆる映画に出会える、東京ならではの映画館の旅へと出かけてみませんか。
かつて「映画の街」として賑わった青梅市に2021年、約50年ぶりに復活した映画館「シネマネコ」。オープン1年で1万人を動員し、遠方から訪れるファンも多い、注目のミニシアターです。
まさに映画の世界から抜け出たような水色の建物は、織物の産地だった青梅の歴史を今に留める旧都立繊維試験場で、昭和10年に建てられた国登録有形文化財の貴重な木造建築物です。この辺りは養蚕が盛んで、蚕を狙うネズミと、ネズミを退治するネコが多くいたことから「シネマネコ」の名も生まれました。
内部は建物の魅力を生かしてリノベーションされており、むき出しになった約85年前の梁が、最新の上映設備と共存しています。座席数は63席。紫色のふかふかの椅子は、新潟県十日町にあったミニシアター「十日町シネマパラダイス」で使用されていたフランス・キネット社製のものを譲り受けました。館内には誰でも利用できるカフェも併設され、ふらりと立ち寄りたくなる、穏やかな時間が流れています。
シネマネコが誕生したきっかけは、地元である青梅で約10年間飲食店を経営していた代表の菊池康弘氏と、店のお客さんとの会話でした。青梅に以前あった映画館の話を聞き、「青梅には自然のアクティビティはあってもエンタメがない」と感じていた菊池氏は、「映画というエンターテインメントをこの街の人に届けたい」と一念発起、多くの人たちのサポートを受け、10年をかけて映画館を作り上げました。
菊池氏は、飲食店経営の前には蜷川幸雄氏に師事し、俳優を志しましたが、10年が経った29歳のときに「俳優は向いていない。自分のやりたいことより、得意なことを生かして、人々に必要とされることをする」という「天命」を悟ったのだそう。そこから、生計を立てるために続けていた飲食業に専念、楽しみを見出しました。その想いは映画館の仕事にも貫かれており、自分自身のこだわりや先入観はまったくないと言います。上映作品も「みんなが喜んでくれるものを」と、主に封切りから1年以内の人気作品を中心に、その他ドキュメンタリー作品などを選定。こけら落としには、直筆の手紙をスタジオジブリの宮崎駿監督に書き送り、過去に例がない『猫の恩返し』の上映を実現させました。
菊池氏の次の目標は、シネマネコで「青梅映画祭」を開催すること。ゆくゆくは5月の「青梅大祭」、2月の「青梅マラソン」に並ぶ、西多摩地域全体の一大イベントにしたいと言います。シネマネコは、映画館としての役割のみならず、多くの人々を繋ぐ、青梅のランドマークとしてこれからも愛されていくに違いありません。
東京東部初のミニシアターとしてオープンした「ストレンジャー」。2022年9月のこけら落としには、その期間のためだけに本国から買い付けた、フランス映画の巨匠、ゴダールの日本上映権利切れの希少な作品6本を上映。ここでしか見られない作品を劇場上映するとあって、全国から熱烈なゴダールファンが駆けつけ、話題を集めました。
一方で、創設者でありチーフディレクターの岡村忠征氏が全49席の小さな映画館にかける想いは、「すべての映画好きに開かれた、よりフレンドリーな場所に」といういたって気さくなもの。ゴダールをはじめとした作家特集のキュレーションに心血を注ぐ一方で、ライトな映画ファンも楽しめるよう、動画配信サービスでは未解禁の作品、新作よりリーズナブルに楽しめる準新作を織り交ぜた上質な上映プログラムを編成しています。
ストレンジャーが目指すスタイルとは、古着屋さんやレコードショップなど他ジャンルでは当たり前に見かける、客と店員が好きなものについて話し込むあの光景。その場となるのが併設のカフェ「Stranger Cafe」で、映画館の“ロビー”にあたる場所でありながら、劇場の規模と比べるとアンバランスなほど広々。本格的なカフェスクールで学んでもらったという映画通のスタッフたちが、劇場運営とカフェスタッフを兼任しています。群馬県前橋市「敷島焙煎所」が焙煎する「Stranger」オリジナルブレンドのコーヒー、学芸大学のカフェ「チェー・バーバーバー」が手がけたメキシカンをアレンジしたカフェフードなど、メニューのクオリティも全力で追求しています。
その他にも、上映作品をテーマにオリジナル冊子「Stranger MAGAZINE」を製作したり、上映後に識者とトークセッションできる映画サロンを構想したり、インド映画の上映に合わせて本格インドカレー店とコラボレーションしたり。オープンから約半年、わくわくが詰まった映画体験を提供し続けています。豊かで奥深い、でも誰でも気軽に触れられる映画世界に出会いに、ぜひ足を運んでください。
池袋に開館して以来、60年の歴史の中で自由な革新を重ねながら、東京の名画座文化を盛り上げてきた「文芸坐」。1997年に閉館した後、2000年に「新文芸坐」として復活、そして2022年、革新のスピリットはそのままに、大規模リニューアルを遂げました。
旧来の「35㎜フィルム」によるフィルム上映を守り抜く一方で、名画座としては初となる4Kレーザーを導入。さらに、「映画館のファンは音につく」と、音質も最上級を追求し、都内の名画座の中で最大級となる264席の新しい劇場に合わせて、独自の音響システムまで開発。リニューアル記念に上映された「4Kで甦る 黒澤明」特集では、名作に新しい迫力を付け加えたと映画ファンを喜ばせました。上映中は原則スタンディングとし、熱烈な支持を受ける「スタンディング強制上映」も、この最新の映写装置によってますますパワーアップしています。
新文芸坐の名物である土曜日の「オールナイト上映」はリニューアル後も継続し、一方で、長い歴史を持つ「2本立て」上映は、1日の上映作品の中から2本の組み合わせを好きに選べる「2本目割」に進化。昼に1本、池袋の街で食事や買い物をしてから夜に残りの1本といった具合に、鑑賞時間も選択可能です。上映プログラムは、マネージャーの矢田庸一郎氏が「コアな映画通もうならせつつ、痒いところに手が届く編成」と話すように、100年前の白黒無声映画を上映したかと思えば、CGを駆使した最新映画も扱い、さらには、ハリウッド映画、ヨーロッパ映画、アジア映画と、まさに古今東西の作品をラインナップ。老舗ミニシアターならではの深い造詣に裏打ちされた味のある名作揃いなので、前知識がない状態でインスピレーションで選んでも、また、楽しさが広がります。
住所 | 東京都青梅市西分町3-123 青梅織物工業協同組合敷地内 |
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アクセス | JR青梅線「東青梅駅」駅より徒歩7分、「青梅」駅より徒歩15分 |
その他 | 特別ネコ会員(年会費2,000円)はいつでも映画が1,000円で鑑賞可能 |
URL | CINEMA NEKO |
住所 | 東京都墨田区菊川3-7-1 菊川会館1階 |
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アクセス | 都営新宿線「菊川」駅A4出口より徒歩1分、東京メトロ半蔵門線・都営大江戸線「清澄白河」駅より徒歩13分 |
その他 | 上映スケジュールはInstagram、Twitterでも発信中 |
URL | Stranger |
住所 | 東京都豊島区東池袋1-43-5 マルハン池袋ビル3階 |
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アクセス | JR線・東京メトロ・西武池袋線・東武東上線「池袋」駅東口より徒歩5分 |
その他 | 上映スケジュールはInstagram、Twitterでも発信中 |
URL | 新文芸坐 |
営業時間・定休日・料金等の最新情報については公式ウェブサイトでご確認ください。
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