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第56回 地下鉄と駅を巡る二つの物語

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 東京観光には鉄道が欠かせません。今回は、地下鉄の博物館と駅の美術館を紹介します。

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乗客の切符を切った「改札鋏」=地下鉄博物館

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床が格子状デザインの東京駅丸の内北口

本物の地下鉄を運転!?

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東京メトロ千代田線の運転シミュレーター

 地下鉄博物館は、東京メトロ東西線葛西駅の高架下にあります。
 「すごいじゃない。正解!」。博物館のプレイランドコーナーで、タッチパネル式の「地下鉄Q&A」に挑戦する男の子に、男性職員がにこやかに話しかけます。プレイランドコーナーは、博物館に7つあるコーナーで最も人気があります。
 とりわけ東京メトロ千代田線の運転シミュレーターは、本物と同様の車両を設置したもの。マスターコントローラーとブレーキが分かれており、現在3編成しか走ってないレア車両です。  
 運転は初めてという方もご安心を。「まず左手でマスターコントーラーを全開し、右手でブレーキを緩めましょう」と、元運転士の職員が丁寧に教えてくれます。
 根津駅を出て、トンネル内に目をこらし、制限速度を超えないように運転すると、湯島駅はすぐ。停止線に合わせてゆっくり停車します。「もう1回!」と、運転が病みつきになる人もいるというのも納得です。
 東京メトロ全線の模型が地下を走るジオラマ「メトロパノラマ」も、必見でしょう。

地下鉄をつくった人、支える人

 1927年、日本で初めての地下鉄が、上野―浅草間を走りました。その13年前、ロンドンの地下鉄を見た早川徳次(のりつぐ)が、「東京にも地下鉄が不可欠である」と、帰国後、自ら地質や湧水量、交通量の調査に取りかかります。「東京は地盤が柔らかすぎて、地下鉄なんか無理だ」という反対の声が多いなか、協力者や資金集めに奔走したのです。
 歴史コーナーには、早川の努力の結晶である日本初の地下鉄車両「1001号車」が、上野駅を再現したプラットホームに止まっています。改札も10銭白銅貨を入れて通り抜けた当時のターンスタイル。現在は10円玉などで試せます。
 同じコーナーには「地下鉄で働く人々」も。「運転士」「検車区」「改札掛」など6つの仕事を、職員の思い出話と映像などで紹介しています。新宿駅でカチカチと入鋏パンチを鳴らしながら、切符を切り、定期券を確認する「改札掛」。一日の運転が終わった車両を、金属の棒で検査する「検車区」。わずか10秒ほどの映像と仕事道具を見るだけでも、静かな感動が押し寄せます。
 改めて館内を見回せば、トンネル掘削に関わる人や指令所で働く人の写真が目に留まります。大勢の技術者たちが、安全で快適な鉄道をつくってきたことを実感します。

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上野駅を再現したプラットホームに止まる日本初の地下鉄車両「1001号車」

丸の内で唯一変わらぬ東京駅

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1914年ごろの東京駅周辺は広大な空き地が広がっていた

 大都市東京の表玄関にして鉄道の中心地、東京駅。大規模工事を経て、1914年の創建時の姿に復原された丸の内駅舎の中に位置し、この駅の長い歴史を伝えているのが東京ステーションギャラリーです。年間およそ5回の企画展を開催する展示室を抜けた2階回廊部分に、東京駅の歴史を紹介するコーナーが常設されています。
 この回廊は丸の内北口改札の上にあり、眼下に行き交う人の波から、セントラルステーションの雰囲気を存分に味わえます。人々の足元に注目すると、床には印象的な模様が。実はこれは、戦災復興時の天井ドームの内側に施されていた格子状のデザインを、鏡映しに落とし込んだものです。
 回廊内には、東京駅の歴代デザインと丸の内の風景の変遷が分かる模型が並んでいます。駅舎は当初、ドイツ人技師のフランツ・バルツァーによって和風に設計されていました。しかし、西欧列強に肩を並べたい日本側の意向にそぐわず、辰野金吾による英国風デザインが採用されることになります。第二次大戦時には空襲で、3階部分が損壊し、その後永らく2階建てとなって使用されていました。
 東京駅創建当時、周囲は三菱に払い下げられた広大な空き地(「三菱ヶ原」)が広がっていました。その後、この一帯は「美観地区」に指定され、オフィスビルの高さは31メートル以下に制限されていましたが、高度成長期以降に高層ビルが乱立。そして2002年に「都市再生特別措置法」の制定による規制緩和を受けて、東京駅は使用しない容積率(空中権)を売却し、その資金によって復原工事が実現したのです。
 激動する丸の内にあって、東京駅だけはほとんど姿を変えていません。

多言語解説もスタート

 東京ステーションギャラリー館内に目を移すと、赤レンガの2階と、復原工事で完成した白壁の3階が対照的です。レンガの間には、ところどころに空襲による熱で炭化した「木レンガ」も見え、駅舎の歴史の長さを思わせます。
 この秋には、ウェブを介した多言語音声サービスも始まりました。展示室にあるQRコードにスマホをかざせば、英語、中国語、韓国語の解説を聞くことができます。外国人旅行者も多い東京駅の中で、静かに作品を鑑賞しながら、100年以上もの物語も肌で感じられる美術館です。

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赤レンガの2階と白壁の3階の境目。空襲による「木レンガ」も見える

更新日:2017年12月14日

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