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更新日:2021年3月1日

東京には、江戸時代から続く郷土料理とともに、東京を訪れる各国の人々によって磨かれてきた世界の味が根づいています。ここでは、食にまつわるさまざまな文化とともに、東京で味わえる魅力的な食をご紹介します。

食事内容が特徴的なムスリムとベジタリアン

世界中にある独自の食習慣。その中から、まずは特徴的なものとしてムスリムの「ハラール」と欧米を中心に広がるベジタリアンに焦点をあて、その文化や習慣などをご紹介します。

ムスリムが食すのは、許可された食べ物だけ

ムスリムとは世界三大宗教の一つであるイスラム教を信仰している人々のこと。イスラム教には生活全般にわたってさまざまな規範があります。イスラム教=中東の宗教と思われがちですが、実はムスリムの6割以上はアジアの国の人々。全世界の約4分の1にあたる16億人以上とされるムスリムのうち、インドネシアが2億3000万人と世界で一番ムスリムが多い国となっており、次いでインド、パキスタン、バングラデシュと続きます。なお、アジア圏では、マレーシア、中国なども多くのムスリムを抱えています。
彼らが日常で食すのは、イスラーム法において許可された「ハラール」食品。ハラールとは「許可された」という意味のアラビア語で、イスラムの教義に則って食べることが許された食材を指します。反対に「禁じられた」という意味を持つのが「ハラーム」食品で、具体的には「豚」「アルコール」「血液」「宗教上の適切な処理が施されていない肉」などが挙げられます。

健康志向や環境保全重視を背景に増加するベジタリアン

近年日本でも注目されるベジタリアンは、特に欧米で急速に増えています。アメリカでは、厳格な菜食主義者であるヴィーガンの人口が数年間で約6倍にまで増加し、約2,000万人にのぼるとされています。また、ヨーロッパでもドイツやイギリス、イタリアなどで肉の摂取を意識的に控えた食生活を実践する人が増え、都市部ではヴィーガンやベジタリアン専門のレストランが次々にオープンしています。
こうした背景にあるのが、人々の健康や環境保全に対する意識の高まりです。糖尿病などの慢性疾患と動物性食品の摂取の相関関係が明らかになり、病気のリスク低減や治療策として動物性食品を除く食生活が注目されています。また、食糧の生産過程において地球環境や生態系に大きな負荷がかかっていることが明らかになり、地球環境を守るために菜食者になる人も増えています。
そもそもベジタリアンの言葉の由来は“Vegetable”(ベジタブル、「野菜」)ではなく、ラテン語の“Vegetus(ベジタス)”=「活気のある、健全な」であり、野菜を食べることが目的なのではなく、「健全な食事をする」のが本来の意味です。きっかけはさまざまでも、菜食者にとってベジタスであることはポリシーであり、ライフスタイルでもあるのです。

ベジタリアンのタイプはさまざま

一般的に「肉や魚などの動物性食品を食べない菜食主義者」と定義されるベジタリアンですが、実際にはヴィーガンのように動物由来のものを一切とらない厳格な人もいれば、乳製品や卵、鶏肉などはOKという人までいて、タイプはさまざま。“菜食主義ときどき動物性食品”というセミベジタリアンまで含めると、実に多様です。

〈主なベジタリアンのタイプ〉

ヴィーガン 肉、魚をはじめ、卵、乳製品、はちみつといった動物由来の食材を全面的に摂取せず、植物性の食品のみを口にする。
ホールフード菜食 小麦なら全粒粉、米なら玄米など、無精製の植物性食品にこだわりを持つタイプ。
ラクト・オボ・ベジタリアン 肉、魚は食べないが卵と乳製品は摂取する。
オリエンタル・ベジタリアン 玉ネギ、ニンニク、ニラ、ラッキョウ、アサツキの「五葷(ごくん)」を食べないヴィーガンで、仏教の精進料理に近いタイプ。

ハラールメニューとベジタリアンメニューの魅力

ハラールメニューやベジタリアンメニューの多くは、海外に出かけなくても東京で味わうことができます。そして、それらの料理はムスリムでも菜食者でもない人が食べてもおいしいと感じられるもの。ここでは、ムスリムとベジタリアンの食の特徴についてご紹介しましょう。

ムスリム以外の人にとっても安心なハラール食品

「豚」「アルコール」「血液」「宗教上の適切な処理が施されていない肉」など、飲食に禁忌事項が多いムスリムの人々。食べてよいものは、野菜・果物全般をはじめ、卵や牛乳、ヨーグルト、バターなどの乳製品。また、パン、米、パスタ、シリアルなどの穀物類や、イスラムの教えに則った方法で屠畜・加工された牛や羊などの肉や魚介類などもOKです。
これらのハラール食品は、ムスリム以外の人にとっても魅力的です。なぜなら、食肉であれば血抜きをするため、バクテリアやカビなど有害な菌に冒されにくく、新鮮な状態の肉が食べられるためです。また、ハラール食品には料理酒やみりんなどアルコールを含む調味料が含まれていないため、アルコールアレルギーの人にも安心です。
近年、東京にはハラールメニューを提供する店が増え、鶏肉と豆腐でできたハラール餃子やハラール和牛を使った焼き肉、ハラール食材を用いたラーメンなど、ハラールという新しい角度から日本食を楽しむ動きも出てきています。

野菜そのもののおいしさが楽しめるベジタリアンメニュー

ベジタリアン向けのメニューは、野菜ばかりで物足りないのではと思われがちですが、野菜中心でも工夫次第でボリューム感を出したり、大豆ミートやテンペ(大豆などをテンペ菌で発酵させたインドネシア発祥の醗酵食品)などを用いて肉のような食感を出したりできます。そしてなんといっても、野菜そのもののおいしさを最大限に活かせるのが魅力。また、人気メニューをベジタリアン対応にして提供する店も多くあります。例えば、卵や牛乳、油を使わず、薄力粉やベーキングパウダーでふんわりした極上の食べ心地が楽しめるパンケーキや、チーズの代わりに蕪を用いたカプレーゼ等々。ベジタリアンやヴィーガンメニューのあるレストランの増加が、人気の証といえます。

世界的な食のトレンド

ハラールやベジタリアン以外にも、最近よく耳にするいくつかの食に関するキーワード。そこから見えてきたのは、健康、そして環境へのやさしさという概念でした。

グルテンフリー

小麦などに含まれるグルテンを摂取しない食事や食品をさす、グルテンフリー。そもそもグルテンとは小麦や大麦、ライ麦などの穀物の表皮の中にある、胚芽と胚乳の部分から生成されるタンパク質の一種。グルテンフリーの食事は本来、グルテンアレルギーの人向けのものでしたが、最近では、腸内環境を整えるなどの理由から欧米を中心に健康志向の人も食べるようになり、小麦の代わりに米粉を使用したパスタやパンなど、グルテンフリーのメニューを提供する店が都内でも増えてきています。

オーガニック

オーガニック(有機)とは、農薬や化学肥料に頼らず、自然の恵みを生かした栽培・加工方法のことです。遺伝子組み換え技術を使用せず、化学肥料や農薬の使用を制限しているオーガニック食品は、残留農薬で健康を害する可能性が低いといわれています。しかも、農薬や化学肥料による環境汚染を防ぐという役割も。世界では有機栽培農作物の需要が増加傾向にあり、その市場は急成長を続けています。なかでも大きなシェアを占めるのはアメリカで、次いでドイツ、フランスと続きます。ベジタリアン人気と同様、健康志向や地球環境・動物保護への意識の高まりを背景に、東京でもオーガニック食品への流れはこれからもますます拡大していくと思われます。

マクロビオティック

桜沢如一氏が提唱した後、アメリカを中心に世界に広まったマクロビオティックは、穀物や野菜など日本の伝統食をベースとした食事法のことで、「身土不二(その土地の旬のものを食べる)」「一物全体(食材は丸ごと食べる)」「陰陽調和(熱くて水分の少ないものと、冷たくて水分の多いものをバランスよく食べる)」という3つの基本があります。玄米を主食に、副菜として季節の野菜を使ったサラダや煮物などをとり入れるスタイルの食事は、ベジタリアンやヴィーガンとともに対応レストランが増えています。

東京ならではの食の魅力

最後に、東京ならではの食文化に絞り、その歴史と魅力をご紹介します。

江戸前寿司

にぎり寿司が誕生したのは、19世紀初頭。江戸湾でとれた新鮮な魚介をネタにしたのが江戸前寿司の始まりです。冷蔵庫がなかった当時、ネタを日持ちさせるために、生魚を酢や塩で締めたり、煮る・漬ける・炙るといった創意工夫が加えられ、江戸前の技が現代へと継承されてきました。食材の個性を生かしつつ、シャリの温度をコントロールした端正な握りは、まさに食べる宝石。熟練の寿司職人の技には、江戸の粋が息づいています。

天ぷら

日本を訪れる外国人にも人気の天ぷら。室町時代、南蛮料理として伝わった天ぷらは、当時貴重だった油を大量に使うため高級品とされました。その後、江戸時代に油の生産量が増加して庶民の味として定着しましたが、やがて専門店なども誕生し、高級料理としての地位も確立。飲食店の格付けで世界的に有名な「ミシュランガイド」にも都内の名店がいくつも掲載されています。天ぷらは、水と油、甘さと鮮度、食感と旨味の完璧な調和が何よりの魅力。食材に合わせて揚げる温度や時間、衣の具合を微妙に調整しながら、素材の味を引き出す職人技は、驚くほどの軽い仕上がりが特徴です。

そば

健康食としても人気の高いそば。江戸時代から庶民に親しまれてきたそば文化は、現在も東京の各地で楽しめます。なかでも、門前の参道に数々のお店が軒を連ね、秋にはそば祭りも開催される「深大寺そば」は有名です。そば粉とつなぎを水でこね、切り出し、茹で上げるというシンプルな作り方ゆえに、素材の選び方や打ち方などで驚くほど個性が出るのが、そばの奥深いところ。また、たとえ「せいろ」と一言でいっても、つゆによってそばの風味も変わるため、店の数だけ味わいがあるといっても過言ではありません。

鍋料理

冬に食べたい鍋料理は、日本の定番料理の一つです。なかでも、すき焼きやちゃんこ鍋は海外でも有名で、「ミシュランガイド」にも東京のお店が掲載されています。また東京の下町では、明治時代に花街で流行した桜鍋も味わうことができます。桜とは馬肉のことで、かしわ(鶏肉)、もみじ(鹿肉)、ぼたん(猪肉)と並び、江戸時代から隠語で庶民に親しまれていました。このほか、どじょう鍋、あさり鍋、煮込みおでんといった東京から広まったと考えられている鍋料理だけでなく、もつ鍋、水炊き、あんこうなど日本各地の鍋料理も、東京で楽しむことができます。

いかがですか? このように様々な食文化を楽しめるのが東京の魅力。その多様性に満ちた食の世界を、ぜひ都内の名店で楽しんでみてください。
東京観光財団では、ハラール食対応レストランおよびベジタリアン、ヴィーガン対応レストランについてまとめた2つの冊子を作成しています。くわしくは以下よりデジタルパンフレットをご覧ください。

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