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第52回 足を延ばして郊外の美術館へ

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 都心を離れると、東京には武蔵野の原風景が広がっています。今回は散策も楽しめる郊外の美術館・博物館を紹介します。

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深沢小さな美術館

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喫茶室

作家が造った石の美術館

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道先案内人ZiZiを数えながらやってくる子どもも多い

 梅雨の晴れ間にBBQを楽しもうというグループでにぎわうJR武蔵五日市駅から、南沢あじさい山へ向かう一本道を登り始めます。造形作家・友永詔三(あきみつ)(1944~)が営む「深沢小さな美術館」へは歩いて40分。しかし、舗装された道路は歩きやすく、渓流のせせらぎに耳を傾け、あじさいの群生を見ながらのハイキングは楽しみも倍増します。友永さん手製の赤や黄色の帽子をかぶった妖精ZiZiが道辻で案内してくれるので、迷うことなく石造りの美術館に到着します。
 庭には200本ものモミジが植えられ、体長1m50㎝ものチョウザメが泳ぐ池とコイの池があります。開け放たれた出窓の美しさに吸い寄せられるように館内へ。
 友永ワールドの木彫やブロンズ像が並びます。キノコをモチーフにした和紙のランプ、ユニークな魚、そして成熟する少し前の少女像が多くあります。少女たちは十頭身以上の超細身ながら、触れたくなるような木目の柔らかな曲線が特徴です。「女性の形をしているけれど、子ども時代の体験や思いを込めて彫る」と友永さん。高知の四万十川近くで育った友永さんにとって、木は身近な存在。ナイフで何でも作りました。幼少期の経験から、ケヤキ、サクラ、杉と木の様々な材質を生かした作品が生まれます。驚くのは、少女像の頭から足先まで、1本の木から彫り上げていることです。

 

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木彫の少女。羽以外は一本の木から彫り上げた

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プリンプリン姫

 さて、もう一つの見どころが『プリンプリン物語』。1979年から3年間、NHKで放映された人形番組です。プリンプリン姫が祖国と両親を探す道中、様々な人形たちに出会うストーリーに、子どもたちは夢中になりました。この人形も友永さんが作りました。その人形たちが所狭しと並んでいます。いずれも味がある顔ばかり。友永さんいわく「子どもはライバルだと思っていた」。子どもだから易しく、などと考えずに真剣に向き合ってきたと言います。現在、BSプレミアムで再放送中です。

 実は、美術館も庭も池も、全て友永さんの手造り。建物の基礎構造に必要な杭の数などを専門家に聞き、ほぼ1人で造りました。ガウディの建築物をイメージしたという通り、喫茶室は石を使った柱と楕円の空間が印象的です。「物をつくる人間は、型にはまってはいけないと言われた」という友永さんの言葉を反芻し、池を眺める時間こそ、足を延ばしたから味わえるひとときです。

茅葺き屋根の博物館

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正子の書斎

 小田急線鶴川駅で降り、住宅街を12~3分歩くと、竹林が見えてきます。門をくぐると、樹齢100年を超える柿の大木の枝ぶりに圧倒されます。白洲次郎・正子夫妻が1943年から暮らした旧白洲邸武相荘です。「武相荘」とは、武蔵と相模の境にある地にちなんで、次郎が名付けました。
 白洲次郎は、連合軍占領下の日本で吉田茂首相の側近として活躍した実業家です。正子は随筆を書き、骨董蒐集家としても知られています。
 ケンブリッジ大学で学んだ次郎は帰国後、樺山伯爵家の正子と惹かれ合い、結婚します。第二次大戦中、二人は鶴川村に転居しました。  
 

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室町時代の能面「老女」

 夫妻の母屋だった茅葺き屋根の家が、博物館として公開されています。革張りのソファが置かれたリビングや書物に囲まれた正子の書斎など、当時の生活を再現しています。正子の着物や器、装身具と一緒に、次郎が関わった現代史を物語る貴重な展示物も置かれています。
 博物館は中学生以上でなければ入館できません。しかし、高床式穀物庫を改装したバーカウンターや、次郎が乗っていたアメ車と同型の100年前のペイジが置かれたガレージカフェは自由に入れ、農家の面影を残しながら夫妻のテイストを十分味わえます。また、納屋を改築した趣あるレストランではエビカレーや親子丼など、白洲家の食卓をイメージしたメニューを召し上がれます。
 2001年に開館し、約70万人が訪れました。「貴重なお宝を見たではなく、昭和初期の暮らしを懐かしんで、おいしい空気を吸ってランチでも楽しんでもらえれば」と、夫妻の娘婿でもある館長の牧山圭男さんは語ります。雑木林にはセミの鳴き声が響き渡り、フクロウやタヌキもやってきます。初夏はキンラン、秋はモミジ、冬は椿など四季を感じられる自然の場所です。
 武相荘では陶芸や能の教室、コンサートも開かれ、会員制倶楽部では多様な人が交流しています。かつて白洲夫妻を慕って、政財界人や文化人らが通ったというサロンの伝統は今も引き継がれています。




◆関連情報◆
深沢小さな美術館 HPなし
▽住所 あきる野市深沢492▽開館時間 午前10時~午後5時▽休館日 水・木曜日。12~3月は休業▽入館料 大人500円、小中高校生300円▽交通 JR武蔵五日市駅から徒歩40分。タクシーで5分▽問い合わせ先 同館電話042・595・0336

更新日:2017年8月18日

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