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第22回 世田谷美術館(村上由美学芸員)

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伊原宇三郎《トーキー撮影風景》1933年 油彩、キャンバス 世田谷美術館蔵

世田谷美術館「トーキー撮影風景」

世田谷に着目した美術作家と映画界

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東宝スタジオのメインゲート 写真提供:東宝株式会社 ©TOHO CO.,LTD.

世田谷美術館では、アンリ・ルソーをはじめとする素朴派の作家と、世田谷区ゆかりの作家の作品を中心に所蔵しています。今でこそ住宅街のイメージがある世田谷ですが、近代日本においては“東京の郊外”と言っていい場所でした。地方出身作家が活動の場を東京に移す際、広いアトリエを安価な値段で構えることのできる世田谷は最適だったようで、今の日本を代表する作家の多くが一度は住んだといっても過言ではありません。そのため当館のコレクションは、ゆかりの作家の作品だけでも相当な数に上ります。

現在開催中の企画展「東宝スタジオ展」(4月19日まで)で展観している、《トーキー撮影風景》を描いた伊原宇三郎も、そんなゆかりの作家のひとり。この企画展は、やはり世田谷に土地が豊富にあることに着目して建設された、東宝スタジオの歩みを紹介するものです。今では業界随一の設備を誇る映画撮影所となった東宝スタジオの、前身であるP・C・L(写真化学研究所)が世田谷区砧(現・成城)に創立されたのは、映画がサイレントからトーキーの時代に移り変わろうとしていた1932年のこと。伊原はちょうどその前年に成城にアトリエを構えました。P・C・Lは、P・C・L映画撮影所として本格的に映画作りを開始し、伊原はすぐ近くにできた撮影所に何度も通ってこの絵を描きました。右手前に大きく描き込まれた録音ブースが、トーキー初期の撮影風景を象徴的に表しています。

“日本のハリウッド”となったスタジオで

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久保一雄《小さな漁港》1959年 世田谷美術館蔵

P・C・L映画製作所はその後、“東宝砧撮影所”の呼び名で親しまれ、数々の傑作を世に送り出してきました。「七人の侍」と「ゴジラ」が生まれた1950年代は日本映画の黄金時代と謳われ、周辺にも多くの撮影所や映画製作プロダクションが建ち並んだ当時の世田谷は、さながら“日本のハリウッド”の趣であったと伝えられています。

映画セットや模型などを手掛けるスタッフには、多くの美術作家も携わっていました。中でも1933年から1948年まで東宝で黒沢明や山中貞雄らの監督映画で美術監督を務めた久保一雄は、独立美術協会を中心に絵画作品を発表しながら、その後も映画美術監督として活躍したことで知られています。

久保が世田谷に住んでいたことから、当館では絵画作品を多く所蔵しており、開催中のコレクション展「世田谷に住んだ東宝スタジオゆかりの作家たち」(4月12日まで)で公開しています。つまり現在の当館では、企画展で久保の映画美術のセットのデッサン画を、コレクション展では絵画作品をご覧いただくことができるのです。映画美術を手掛ける際は物語の背景を徹底的に研究し、緻密なスケッチを元に具体的なセットをつくり上げた久保ですが、絵画作品ではむしろ抽象的な表現を好みました。同時期開催のふたつの展示を見比べることで、映画と美術の意外な関係と共に、久保という作家の幅広さも感じていただけることと思います。

Information

世田谷美術館
所在地   〒157-0075 東京都世田谷区砧公園1-2
TEL   03-3415-6011
開館時間  10:00~18:00 ※展覧会入場は17:30まで
休館日   月曜日(祝日・休日の場合は開館、翌日休館)

おすすめミュージアムグッズ

■ルソーキャンディー
アンリ・ルソーの作品は館のコレクションの柱のひとつ。『フリュマンス・ビッシュの肖像』がモチーフのキャンディーはショップの定番商品です。ソーダ味、12粒入り。
▼¥300(税込)
■よしのや葛餅
老舗の吉野葛専門店の葛餅が館オリジナルパッケージで販売されています。コレクションのもうひとつの柱である北大路魯山人の作品と、季節のモチーフ(現在はひな祭り)の2種類。
▼各¥1,080(税込)

更新日:2015年2月25日

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