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第17回 山種美術館(髙橋美奈子学芸部長)

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東山魁夷《満ち来る潮》 1970(昭和45)年 山種美術館

山種美術館「満ち来る潮」

皇居宮殿にある絵画を山種美術館で

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山口蓬春《新宮殿杉戸楓4分の1下絵》 1967(昭和42)年 山種美術館

山種美術館は、山種証券(現SMBCフレンド証券)の創立者・山﨑種二の個人コレクションをもとに1966年に開館した、日本初の日本画専門の美術館です。2009年に現在の場所に新築・移転しています。約1800点の所蔵品のうち、東京に関連の深いものとしてまずご紹介したいのは、皇居新宮殿の絵画にちなんだ作品群。1968年、千代田区にある皇居に新しく宮殿が建設された際、宮内庁は当時の日本画壇の錚々たる作家陣に、内部装飾のための作品制作を委嘱しました。それら宮殿の絵画を目にする機会を得て感銘を受けた当館初代館長の山﨑種二が、ひろく人々が鑑賞できるようにしたいと、親しくしていた画家たちに同趣の作品の制作を直接依頼したのです。
こうして山種美術館の所蔵となった作品の一つが、「昭和の国民画家」と称された東山魁夷(1908年-1999年)が描いた《満ち来る潮》。実は元となった宮殿の《朝明けの潮》に描かれた海は引き潮の朝の海なのですが、証券会社の経営者であった種二は、「引き潮では困る」と、験を担いで満ち潮の海へと変更してもらったというエピソードが残っています。

山口蓬春(1893-1971)の《新宮殿杉戸楓4分の1下絵》は、新年祝賀の儀、内閣総理大臣と最高裁判所長官の親任式、歌会始の儀など主要な儀式に使用されることで知られる正殿松の間にある杉戸絵《楓》の関連作。2点とも、11月22日からはじまる特別展「没後15年記念 東山魁夷と日本の四季」において、橋本明治や上村松篁らの宮殿絵画にちなんだ作品とともに公開される予定です。今年は天皇陛下の傘寿を記念した、宮殿の特別公開の年でしたので、宮殿内で実際の絵画をご覧になった方も多いかと思います。普段はなかなか見られない作品なので、この機会にぜひ当館の展覧会で、皇居宮殿の絵画を鑑賞している気分を味わっていただければと思います。

近代・現代の画家が東京の街をテーマに描いた作品

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小林古径《秌采(しゅうさい)》 1934(昭和9)年 山種美術館

当館では皇居宮殿にちなんだ絵画のほかにも、東京の四季や風景を描いた作品もいくつか所蔵しております。現在開催中の特別展「輝ける金と銀―琳派から加山又造まで―」(11月16日まで)で展示中の小林古径(1883年-1957年)の《秌采(しゅうさい)》をご紹介します。新潟生まれの古径は上京して画家となります。1920年、東京・馬込に画室を構え、その後1934年には新進気鋭の建築家・吉田五十八の設計による自邸を新築しています。当時の馬込の周辺には柿畑が広がっており、秋になると古径の庭にも柿が実ったそうです。《秌采》に描かれているのも、画室から見えたであろう籬(まがき)と柿の木なのでしょう。葉の表裏や、時間とともに枯れゆく葉の変化を、複数の金を使い分けて表現した、古径の観察眼と技が光る一作です。現在、画室は新潟に移築され、都内では実際に見ることができませんが、当時の東京・馬込をしのぶことができる作品です。

さらに、奥村土牛が1926年に転居し、昭和初期に住んでいた赤坂・谷町(現在の六本木一丁目)付近を描いた《雨趣》、速水御舟が関東大震災後の瓦礫と廃墟の東京の町を描いた《灰燼》、そして川合玉堂が戦時中疎開をしていた奥多摩(御岳)の田植えの様子を描いた《早乙女》(「没後15年記念 東山魁夷と日本の四季」〔11月22日から〕で展示予定)なども当館の所蔵品。《雨趣》や《灰燼》は現段階では次の公開予定が決まっていませんが、いずれも機会があればぜひご覧いただきたい作品です。
日本画は、鉱物を原料とする岩絵の具や、和紙といった自然の中にある素材が用いられているため、印刷物ではなかなか本来の色彩や質感など、その魅力が伝わりません。作品をもっとも最適な環境でご覧いただけるよう、当館では照明にも最大限の工夫を凝らしていますので、ぜひじっくりと美術館で日本画をご鑑賞いただければと思います。

Information

山種美術館
所在地   〒150-0012 東京都渋谷区広尾3-12-36
TEL   03-5777-8600(ハローダイヤル)
開館時間  10:00~17:00 ※入館は閉館の30分前まで
休館日   月曜日(祝日の場合は翌日)、展示替え期間、年末年始

おすすめミュージアムグッズ

■東山魁夷&小林古径グッズ
館蔵品モティーフの文具や雑貨が幅広く揃うミュージアムショップより、今回取り上げた画家の作品のグッズをご紹介。ポケットタイプのクリアファイルや、筆で書いてもにじまない和紙の封筒など、デザインと使いやすさにもこだわったものばかりです。
▼東山魁夷《満ち来る潮》(部分) A5クリアファイル ¥450 ▼東山魁夷《秋彩》 封筒 ¥180 ▼小林古径《秌采》 メモ帳 ¥350(すべて税抜)

■「Cafe椿」オリジナル和菓子(菓匠「菊家」特製)
館内の「Cafe椿」には、出品作品をイメージした特製和菓子が展覧会ごとに登場します。小林古径《秌采》がモティーフになった和菓子「秋風」は、現在の展覧会期間中(~11月16日)限定。2個以上のご注文は、持ち帰りも可能。
▼1個¥510(税込)

更新日:2014年9月25日

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