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第16回 永青文庫(石井窓呂学芸員)

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菱田春草「落葉」

永青文庫「落葉」

細川家の伝来品と護立コレクション

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菱田春草「黒き猫」

永青文庫は、江戸時代から第二次世界戦後にかけて、細川家の屋敷であった一角にある美術館です。細川家は戦国武将・細川藤孝(幽斎)を初代とする名門で、江戸時代には主に熊本を治めていましたが、参勤交代の際の滞在先として江戸にもいくつかの屋敷を持っていました。明治に入り、東京に移り住むことになった細川家が選んだのがここ、目白台のお屋敷です。敗戦により占領軍に接収される以前は、神田川から目白通りまで、12万平方メートル以上の敷地面積を誇る広大な邸宅でした。

代々、文武両道であった細川家には、文書類や茶道具、能面や工芸品などの伝来品がそもそも無数にありました。そこに日本近代美術などのコレクションを加え、1950年に永青文庫を設立したのが、第16代当主の細川護立(ホソカワ モリタツ)です。元内閣総理大臣で現永青文庫理事長・細川護煕の祖父にあたる護立は、「美術の殿様」と呼ばれたほどの蒐集家で、大変な目利きとして知られています。交友範囲も幅広く、数々の芸術家やコレクターが目白台の邸宅を訪ねてきていました。当館の人気作、『落葉』と『黒き猫』を描いた菱田春草も、護立と親交のあった画家の一人。春草がまだ酷評されていた頃から注目していたというエピソードからも、護立の審美眼の確かさが窺えます。

今でこそ日本近代美術の最重要作家の一人に位置づけられる春草ですが、画業初期の輪郭線を描かない作品群は、「朦朧体」と呼ばれて揶揄されていました。『落葉』と『黒き猫』は、朦朧体の時期を経て、自然主義と装飾性が融合した名作を生み出していた晩年の作品です。若くして眼病を患った春草は、療養のために転居した代々木で、36年の短い生涯を終えました。『落葉』は、よく散歩をした代々木の雑木林が題材だと言われています。今年は、そんな春草の生誕140年。秋に東京国立近代美術館で開催される「菱田春草展」に、当館の『落葉』と『黒き猫』も出展することになっています。

「美術の殿様」が住んだ目白台のお屋敷で

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高野松山「蒔絵狩猟文鏡箱」

護立が「美術の殿様」と呼ばれたのは、目利きのコレクターであったと同時に、若い芸術家の支援に積極的だったからでもあります。後に蒔絵の人間国宝第一号となった高野松山も護立の支援を受けた一人で、一時期は目白台の敷地内に住み、「昼は殿様のボディガード、夜間に制作」という生活を送っていました。『蒔絵狩猟文鏡箱』は、やはり護立が蒐集した中国の出土品、『金銀錯狩猟文鏡』を納めるために作られたもの。狩猟文鏡の意匠を隅々まで忠実に写した、松山の技が光る逸品です。当館では、そんな護立コレクションを含む約9万点の所蔵品を、年4回展示替えをしながら公開しています。

Information

永青文庫
所在地   〒112-0025 東京都文京区目白台1-1-1
TEL   03-3941-0850
開館時間  10:00~16:30 ※入館は閉館の30分前まで
休館日   月曜日(祝日の場合は翌日)、展示替え期間、年末年始

おすすめミュージアムグッズ

■ポストカード
細川家伝来の工芸品から護立の日本近代美術コレクションまで、様々なポストカードの中でも、やはり菱田春草の「黒き猫」が一番人気です。
▼各¥100(税込)
■図録
2010年に東京国立博物館で開催された「細川家の至宝」展の図録には約300点、財団創立55年を記念した「永青文庫の国宝」展の図録には約40点の館蔵品が掲載されています。
▼「細川家の至宝」¥2,500 ▼「永青文庫の国宝」¥1,200(共に税込)

更新日:2014年8月25日

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