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第12回 板橋区立美術館 (弘中智子学芸員)

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寺田政明《夕陽(前野城山付近)》 1947年 板橋区立美術館蔵

板橋区立美術館「池袋モンパルナス」関連作品

池袋と板橋を拠点にした画家、寺田政明

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寺田政明《芽》 1938年 板橋区立美術館蔵

板橋区立美術館では、板橋区や周辺地域にゆかりのある作家の作品を中心に収集しています。コレクションに昭和前期の前衛美術が多いのは、その当時、「池袋モンパルナス」と呼ばれる芸術家のコミュニティが板橋の玄関口ともいえる池袋にあったから。今でこそ繁華街としても住宅街としても大いなる賑わいを見せる池袋ですが、地名に「池」とつくことからも分かる通り、かつては池が多く住居には不向きとされる土地でした。そんな池袋に、北向きの窓や大きな扉といった絵画制作に適した条件を備えた「アトリエ付き住宅」が建てられ始めたのは、1930年頃のこと。家賃の安さも手伝って、やがて多くの美術学生や画家が集まるようになり、詩人・小熊秀雄の作品にちなんで「池袋モンパルナス」と呼ばれるようになったのです。

そんな「池袋モンパルナス」の中心的画家の一人に、寺田政明(1912年~1989年)がいます。生まれは北九州ですが、青年時代を豊島区で過ごし、戦後には板橋区前野町に居を構えた、当館とゆかりの深い作家。『夕陽(前野城山付近)』に描かれているのは、マンションが建ち並ぶ今の様子からは想像できませんが、その前野町の風景です。この作品には丘や木、家と共にミミズをついばむ、鳥も描かれています。寺田は朝起きてから朝食をとるまでの間にもう何か、描き始めていたというほど多作の作家で、特徴的なのはやはり、生き物を描いた作品群。寺田の家族の話では、庭に鳥や虫が集まってくることを好み、蚊一匹を殺すことすら良しとしなかったそうです。『芽』などの作品からは、寺田の命あるものに対する親しみを感じ取ることができます。

芸術家のコミュニティから繁華街、住宅街へ

「池袋モンパルナス」が最も栄えたのは1941年頃で、熊谷守一や丸木位里ら、多くの著名な作家がアトリエを構えていました。その後、戦争が勢いを増すと、池袋の空襲、作家自身の出征、戦後の区画整理などで、アトリエは徐々に姿を消していきます。そして約70年が経った現在では、アトリエ村は住宅街に、無数にあった銭湯のほとんどはコンビニに、とすっかり様変わり。昨年寄贈された『池袋』は、1945年4月の空襲で焼け跡となった池袋を、「池袋モンパルナス」の作家である田中佐一郎が同年のうちに描いた作品です。交差点のような場所に崩れかかった建物が描かれています。

コレクションは、約8割が「池袋モンパルナス」関連作品をはじめとする近代美術で、残りの2割は江戸時代を中心とした古美術です。時期によっては近代美術を全く展示していないこともあるのですが、江戸絵画も実は、広い意味では板橋区ゆかりといえるもの。宿場町として栄えた板橋は、江戸の美術の流れを語る上で大切な地域だったのです。毎年、夏には「イタリア・ボローニャ国際絵本原画展」が開催され、展示のほかワークショップなども行われていて、当館の風物詩となっています。この4月には狩野永叔の屏風が記念切手になりました。江戸狩野派の貴重な作品がいくつかありますので、ぜひ足を運んでみてください。

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田中佐一郎《池袋》 1945年  板橋区立美術館蔵

Information

板橋区立美術館
所在地   〒175-0092 東京都板橋区赤塚5-34-27
TEL   03-3979-3251
開館時間  9:30~17:00
※入館は閉館の30分前まで
休館日   月曜日(月曜が祝日・振替休日の場合はその翌日)、展示替え期間、年末年始

おすすめミュージアムグッズ

■クリアファイル
館蔵品をモチーフにしたクリアファイルは全8種類。写真は寺田政明の『灯の中の対話』(左)と、江戸絵画コレクションより、柴田是真の『猫鼠を覗う図』(右)。
▼¥300(税込)
■特殊切手「切手趣味週間」
館蔵品の狩野永叔「梅桜小禽図屏風」「菊ニ鶴図屏風」がデザインされた記念切手。4月18日より全国の郵便局で販売されています(なくなり次第終了)。美術館での販売はありません。
▼4種¥82、1シート¥820

更新日:2014年4月25日

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